カーテンの隙間から光が漏れる
大地は今
朝の光を受け
キラキラと輝いている
ただ一箇所
遮光カーテンで隠された
この部屋を除いては…

 

朝〜go together

 

足元に光の筋が一本、走っている。頭痛のする体をゆっくり起こし、投げっぱなしのシャツに着替える。
「…もう朝か…」
もう少し寝たい。服に着替えたというのにもう一度蒲団を握る。

「…ん、ぅ〜ん…」
ふと耳に入った声にゆっくり振り返る。見慣れてきた寝顔がぼやけた視界の中で縮こまる。思わず笑みが零れ、再び蒲団を被った。

「…ぃん…?」
「ん?」
片目を開け傍らを見下ろす。寝言なんだろうか…黒いシャツを着込んだ肩に細い指を乗せ、すやすやと寝息をたてている。顔にかかった長い髪をゆっくりすいてずらすと、暗い部屋の中に柔らかな白い肌と淡く染まった頬が浮かぶ。いつまでも眺めていたい、そんな天使の寝顔…

「……−−っ」
音でもしそうな長い睫毛が動く。深いエメラルドの瞳がこちらを見つめた。

「……ぁさ…?」
「あぁ、朝だよ」
言葉を噛み締めるように聞くと、突然ぱっちりと目を開ける。
「帰らなきゃ!」
慌てて起き上がろうとした傍らの人を引き留めて蒲団に押し戻す。
「…今更遅い」
「…でも…っ」
寝起きのほてった体を近づける。
「終電で帰るって…っ」
「俺は寝たい」
ぐだぐだと騒ぐ唇を塞ぐと、とたんにそれは甘い声に変わる。
「…朝からこんなこと…しちゃダメよ…」
「六法全書にはそんな事載ってないぞ…?」
細い体に手を延ばし、背中に手を添える。
「…ドコ触ってるの…」
「…背中だが?」
すっと服の上からなぞると腕の中が飛び上がる。
「なぞんないでっ…ヤっ…」
半分寝ぼけているせいにして、弱そうな場所をなぞってみる。温かい体が悶え動きながら擦り寄ってくる。
「…ねぇっ、やめて…か、帰らなきゃ…っぁん…」

今だけは
帰したくない

「本当は…?」
「ひゃっ!」
突然のことに体がびくんと動いている。
「…もう、少し…いたいけど…」
真っ赤になった月花は再び傍らで目を閉じる。
「我が儘だな、月花は…」
「ちょっとソレは蔭のほ…っ」
お小言は相手にする気もなく、先を言われる前に塞いでしまう。
「…月花?」
「ん?」
唇を指でなぞった月花は声の主を見上げる。
「…このまま…一緒に暮らさないか…?」
「…え?」
多分凄い顔で見ているんだろう。目をつぶっているから解らない。
「…寝言じゃないぞ」
…寝言にかこつけた照れ隠しではあるが。
「…ん」
ベッドの上の棚から小さな箱を降ろして、小さな両手の上に落とす。
「…こ、これ…」
「帰り際に渡そうと思ってな…用件は終わったから…帰っていいぞ」
あくびを噛み殺して言うと、聞き慣れぬ音がした。
「月花…?」
「…嬉しい…」
涙を堪える音がする。ふと、何故こんなことになったのかと考えてみた。
たしか、二人で酒等酌み交わし、酔ってうたた寝した…?
となるとこの頭痛の原因も見えてくる。
「半分寝ぼけで半分酔いの勢いか…」
結局なにかの力を借りなくてはいけない自分に苦笑いを浮かべ、蔭は目を開けた。
「どうする?遠慮しとくか?」
月花は首を振る。
「…ここで…目が覚めちゃったら…どうしよう…?」
赤い目を擦る月花の頭を撫で、顔にかかる長い髪をどける。
「となりにいるヤツに指輪でもねだってみたらどうだ?」
傍らにいた天使は最高の笑顔を見せた…

 

夢だと思うなら
何度でも言うよ

このまま
ふたりで
また
新しい朝を迎えて
いつまでも
暮らさないか…?

 

 

 

031026
この話の蔭は格好良すぎだと思うのだが。