ただよう泡は
まるで人魚のよう
はかない粒は
まるで命のよう
光を受けて
一瞬一瞬が輝くから
More harder than ever before
見慣れた街が近づいてきた頃、辺りはもう暗くなっていた。暗い街が夜景で光り輝くとエキゾチックな雰囲気が増して、その中に同化する鳶色の髪には艶が増す気がした。その街を少し抜けると住宅街が広がっていて辺りはまた闇になる。
「…このまま…帰りたくないね…」
小さな声はエンジン音の中に消えていく。響は笑った。
「なかなか大胆なコト言うね…いいよ、擾研修でいないから」
信号の直前でウインカーを出して響は道を変えた。
「ちっ違うよっそうじゃなくてっ二人でもう少しいたかったなって…」
「…朝までいてあげるよ?」
彼が笑顔を向けたとき、車は家の前で停まった。
響がコンタクトを外しに洗面所に入ると、シャワーの音が浴室に響いていた。曇り硝子に映る影のせいだろうか、自分自身が中にいる人の姿を想像してしまうからだろうか、いつもより水の音が艶かしく聞こえる…裸眼でぼやける洗面所を見回し、響は笑った。
「君といると僕は狂ってしまいそうだよ…」
「先生っ!」
バスローブをだらしなくあけていた響は我に返ったようにこちらを向く。部屋に飛び込んできた影貴は真っ赤だった。
「勝手に人の服片付けないで!」
影貴が風呂から出ると、着ていた服が綺麗さっぱり消えていた…そのかわりに一枚、ワンショルダーの黒いシャツが置いてあったのだ。
「似合ってるよ…?」
影貴に近寄って微笑むと、恥ずかしそうに視線を反らされた。
「あ…ありがと…」
今日の影貴は、男物と見紛うようなグレーの一分丈のショーツで、上のシャツが合っていた。…あくまで下着だが。
「セクシーなのも捨て難いけど…こっちもいいかもね…」
ベッドの中央に座り、影貴を自分の足の間に座らせた響は、妨げになりそうな影貴の腕を手近なリボンで後ろ手に縛った。影貴は何事かと目を見張る…
すると響はぺったりと座っていた影貴の足を立てて横に開き、自分の肘を影貴の膝と上体の間に入れて固定した。決して足が閉じないように…
「やっ、やっ…なにするのっ!?」
いつもとは明らかに様子が違う…足を閉じようと抵抗したのだが、間に肘があって動かせない…。
「せんせ…っ…やっ、やめっ、あっ」
上に着ていたワンショルダーを人差し指でめくって中を覗き、響は耳元で囁いた…
「立ってるのがシャツに透ける程求めてるのに…?」
気付いて自分を見下ろし…影貴は顔を伏せる。
「ねぇ…?淋しがり屋さん…」
耳たぶを軽く噛まれた後、そこを舐めて耳元に粘る音を残す…響は服を持っていた右手の指を離し、シャツの隙間からウエストに這わせた。
影貴は声を必死に抑え、顔を背けた…
「細い腰…こんなんでよく一晩もつね…」
右手は指の腹でウエストを下から上へなぞり、影貴がそちらに気を取られている間に左手の人差し指を足の付け根と薄い布の間から奥へ…滑り込ませた。
響を迎える準備を無意識に済ませた躰は人差し指を歓迎の雨で迎え入れる…。
「いっ…やっ、あっ…ああっ!!」
上へ上へと昇った右手は左手と同時に影貴の突起を捕らえた。
二カ所を同時に攻められ、影貴は遂に嬌声を紡ぐ…必死に堪えようとする少女を邪魔するように響は相変わらず耳を舐め、影貴に囁きかけた。
「…そう…声、殺さないで…もっとキキタイ…」
荒げた息を耳に吹き付け、左手の中指と薬指も滑り込ませた。
「何本ならイケそう…?」
響が意地悪く動く度に少女は息を荒げ、妖艶な声を上げた。嫌、という言葉とは裏腹に躰は相手の体温を求め、人間の本能は顕著に相手の前に顕れてしまう…
響はぐったりして座れなくなりそうになっている影貴の後ろ手を外し、逃げないように掴むと、今度はその手で影貴の秘部を愛撫させた。
「…解る?自分がどんなに正直か…こんなに濡らしちゃって…明日シーツちゃんと洗ってよ…?」
力無く頷く影貴に頬を擦り寄せ、響は影貴の向きを変えた。響の上に足を広げて座った状態…薄れゆく頭が危険を悟った時はもう手遅れなのだろう…躰の中に激痛が走り、影貴は響の首にしがみついた。
「いっ、いたぁっ、!」
いつもはもっと優しいのに…なんで今日はこんなんなの…っ!?躰の感覚がどんどんなくなっていく…響の濡れた髪に指を絡ませ、荒くなる息で必死に痛みを堪える…耳元に吐息が響く…
「そんなに引っ張ったら痛いよ…」
痛いのはこっちだ!と叫びたくなったが、そんな力もなく、影貴は繋がったまま仰向けに寝かされた。
「いつまで…このまっ…」
静かに口を塞がれ、影貴は何も言えずに目を閉じた…
目を開けると、響は隣で大の字になってうとうとしていた。
二人の上には薄手のタオルケットがかけられ、響の腕が枕になっている…
体を起こそうとすると、眠そうな声で響が尋ねてきた。
「体大丈夫?」
影貴の振り向いた顔で本人が状況を飲み込めていない事が解った響は苦い笑みを浮かべた。
「先にねちゃったんだよ」
なぜかキスされた後の記憶が飛んでいる…ゆっくり回想し、影貴は見る間に真っ赤になっていく…
確か…体中舐められたんだ…
体中がべたべたするのは汗だけではないらしい…下半身はまだべっとりと濡れていた。
何回も膝を立てられ、痛みが走ったせいか、体中が痛い…。もういちど寝っ転がると、影貴の耳元に目を閉じたままの響が顔をよせた。
儚く消える泡も
深い母なる海も
暗く高い夜空も
満点に輝く星も
ビル群の光達も
確かに綺麗だけれど
僕は
二人でいる時の君が
一番綺麗に見える
なによりも深く
誰よりも高く
誰よりも一途に
光り輝く君が
一番儚くて
綺麗なものだよ…
君の涙は
まるで朝露のよう
君の記憶は
まるで虹のよう
太陽の光を受けて
一瞬一瞬が美しいから…
Sat, 19 Jul 2003