SABRINA 〜番外編



袖を引っ張る小さな彼女をよそに恭一は最善作を考えていた。

どうやって風呂の時間を短縮するかだ。

彼女は丹念に風呂に入る訳ではないが遊ぶせいで予想以上に時間がかかるのだ。
そのあと恭一が入ることも考えずに。
かといって時間を重複させようとするとまるで裏切り者を罵るように泣きはじめる。
彼女が夕飯を頬張る二十分が恭一の夕食及び風呂の時間だった。


「風呂場にティーカップごとつれていけばいいんじゃないの?」
母が不意に言い出した。
「私も琉つれて入ってたわよ」
琉…とは母が育てていたサブリナの名前らしい。
米粒を口にくわえていた彼女は手を離して万歳をした。

「わぁーいっ、きょいちとおふろー」

小さな子供同然の彼女はニコニコと笑いながら残った米粒を口に入れ、
恭一の食べ終わるのをじっと待っていた。




肩に彼女を乗せ、空のティーカップを持って恭一は風呂の戸を開けた。
ピンク色の入浴剤が入った風呂の湯をカップにすくい、少女を中に入れてやる。

「わぁーお水ぴんくぅー」
不思議そうに湯をすくい彼女は言った。
石鹸を付けて体を洗っていると彼女はじっと白い泡を見ていた。
「それなぁに?」
手を延ばした彼女をティーカップから出して、カップを置いていたシャンプーの台の傍らに座らせ、手
に付いた泡を彼女の膝に乗せた。
「よーくこすれよ」
彼女は不思議な物質で遊びながら体を泡だらけにした。

頭を洗うときも同様で、彼女は「それなぁに?」を連呼する。
横に立ててある剃刀や洗顔クリームを彼女が解る程度に説明し、恭一は久方の浴槽に浸かった。

「んーっ…」
ゆっくり浸かって体を延ばす心地良さは格別。
彼女が同じように真似をしていた。

「えーちゃんもそっちがいいー」
駄々をこねる彼女を仕方なくカップごと浴槽に浮かべた。
「あははっ、くるくる〜」
ゆっくり回転しながら動くカップに彼女は夢中だ。

「ねぇーきょいちー」
「ん?」
うとうとしていた恭一は目を開けた。
「あれなぁにー?」
彼女が指を向けた先をみて恭一は苦笑いを浮かべた。
「解らなくてよろしい」
「はぁーい…」
のぼせ始めて顔が赤い彼女をつれて恭一は風呂を出た。


「お疲れ様、ゆっくりできた?」
炊事を終えた母が笑う。
「ん、いつもよりは」
パジャマの胸ポケットに納まった彼女のほてった頬を洗いものを終えたばかりの冷たい母の手がつついた。
「楽しかった?」
気持ち良さそうに指を握って彼女は笑った。

「うん、きょいちおとこのこっ」
「何いってんだよっ!」

母が脳天気に笑った。



遊び疲れた彼女はもう眠っている。
恭一は彼女をみながらふと思った。

そういやぁ…
こいつちっちゃいけど
一応…女なんだよな…

あまり実感もなく、まぁいいや、と恭一は目を閉じた。
まだ彼女が来て数日、おもちゃ感覚だったのかも知れない。





「きょいち、お風呂いく?えーきも一緒っ」
我が身の大きさを省みず抱き着いてくる今を思うと…

これはよい選択肢だったのか
恭一は疑問に思う…






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031115
サブリナ風呂編。いかがでしたか?もう色々本当にこれ公開する気ないだろう!な気がします。
なんでこんなエロいのよ。なんでいちいは何も突っ込んでくれなかったんだー!(何を今更
これさぁ、恭一にセクハラで訴えられそうな気がする。私が。(笑