どうしても諦められない

だから僕は…




+ An-Droid +



彼女は三年前に命を落とした。
唯一人愛した少女。
あれは不幸な事故だったんだ。


それでも僕は
君のことが忘れられない…





「できた…」
暗い地下の部屋に朝の光が一筋差し込む。
それは彼の最高傑作品を照らした。

寝台に横たわる少女。
その脇には同じ顔をした少女の写真。
長い睫毛でその瞳を閉ざし、仰向けで寝ている。
漆黒の髪に混じって頭上に伸びる赤や青のコードを束ね、青年は少女の頬を撫でた。
「もう、離さない…」


少女はゆっくり目を覚ます。
茶色の瞳をこちらに向けて…


「………」
「目が覚めたんだね、僕が解るかい?」
何回か瞬きをした少女はゆっくりと体を起こす。
後頭部に繋がっていたコードが反動でぷつぷつと外れた。
「しゃべれるかい…?」
少女は紅い唇を微かに動かす。
「…ハジメ、まして…」
「久しぶり、だろう?」
「ひさシぶり…」


声も
そのままだ…

僕の、愛した少女…



目に溢れた涙を少女は不思議そうに拭い首を傾げた。
「どうしましたか?」

あどけない顔もそのままで、

「なんでも…ないんだ」



彼女が事故にあった時
たまたま解剖に居合わせた僕は
息が止まるかと思った。

数年ぶりの再会が
こんな形になるなんて…

学生時代と同じ
黒い髪と白い肌
唯一変わったのは
大人っぽく、さらに美しくなったこと…


助からない。
こんなに美しいのに
体の中身は
もう、死んでるんだ…


少女の美しさに
僕は禁を犯した。

彼女の遺体を他人とすり替えて
彼女を連れ掠った。

どうせ死んだ命。

燃やされて灰になるなら


僕だけのために


生まれ変わって…




長かった。
古い自分の記憶を手繰った三年間。
地下に篭り、ひたすら残骸から彼女を造り出した。


僕だけの

アンドロイド…





「ゴシュジンサマ…」
「違う。ゴシュジンサマじゃない…」
細い体を抱きしめる。
肌は柔らかく、温かい。
「名前でよんで…」


インプットしてあるはずだ。

僕の名前

君の名前

僕の、君への想いも

君の、僕への偽りの想いも

君と僕との

偽りの、これからの、関係も…



「愛してる…ハヤト…」

「…僕もだよ…エイキ…」


その言葉を、君の口から聞きたかった。

一度でいい

『愛している』と…


寝台の上の少女を強く抱きしめ
青年は一筋の涙を流した…




臓器は人工でも

記憶は偽物でも

想いは偽りでも…





僕は君を愛しているから…





========
マッドサイエンティスト隼人。(汗)
スイマセーん!一度やりたかったんですー。夏の非公式祭ってことでゆるしてくださぃぃっ!
しかも隼人の一人称は俺でした(笑)
このあと実は続きがあったんですが、記憶から抹消しました。
040804