それは

いつまでたっても

飲むことが出来ない

大人の味


+ COFFEE +




「わんちゃん何飲んでるの?一口ちょーだい?」
「嫌。」
デスクに座る秀に覆いかぶさるように影貴が尋ねる。
「なんだよぉ、意地悪ー」
影貴が秀から離れ、時計を見上げた。
「やばい、もう六時だ」
影貴は慌てて机に座り直し、また仕事を始めた。

二人しかいない生徒会室に鉛の音だけが響く。
「わんちゃんなんでまだ仕事終わってないの?珍しいね」
かりかりとペンを動かす影貴を見て秀は言った。
「鈍感。」
「へ?」
影貴が顔を上げると、秀は飲んでいた紙パックを影貴に突き付けた。
「あげる。もういらない。」
そう言って秀は立ち上がった。

一口…ストローをすすると口の中に苦い香が広がり、影貴はむせこんだ。
「わんちゃっ…これ、コーヒーっ!?」

秀は荷物をまとめる手を止め、呆れた。
「気付かなかったの?」
「何で飲めるの!?」
「なんで飲めないのさ?」
影貴はたじろく。
「だって…苦いんだもん…」
秀はそんな影貴を鼻で笑う。
「子供みたい。」
「な、、、わんちゃんに言われたくないよっ!」
影貴はぷいっと膨れてパックを秀に返した。
「い…、いらないよ。」
「なんで?」
「なんで、って…」

ストローの先を見つめ、秀は言葉に詰まった。


「帰る。」
くるりと背を向けるとまた影貴が騒いだ。
「なんだよぉ〜!わんちゃんまで見捨てて帰っちゃうの〜?」

…だから
…ずっと待っててやってるんじゃないか…
好い加減にしろ。
この鈍感…!

頭にきた秀はヤケになって振り返りパックに残っていたコーヒーを飲み干した。
「じゃあさっさと仕事片付けてよ。こっちは一時間以上待たされて好い加減疲れっ…!?」

唇を優しい感触が包んだ
目の前に
閉じた影貴の瞳が見えた…

「んっ…」

二人の口の中に
大人の香が
広がった…





「ありがとう、もうちょっと…まってて?」
影貴が唇を離し、首を斜めにして微笑むと、秀は勢いよく向こうを向いてしまった。

影貴は残された一枚の紙にサインをする為、ペンをとった…



もう少し待ってて
私の課題が終わるまで
歳の割に大人な貴方に
近づくのは簡単じゃないって
解ってるけど

貴方は
なんだかんだ文句言っても
絶対待っててくれるって
信じてるから…
 

  





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・・・いやだから、触れただけだって! と友人に必死になって弁解した記憶がある。(笑
非公式小説秀×影貴版。…短っ!てか何!?
まぁ爽やかっすよね。やっぱ爽やかにいかないとっ!
2003.7.20