一時の夢1
今日、かねてから許可を求めていた<御影の解放>に許可がおりた。
一日だけ培養ドームから出ることが許されたのだ。
香はポケットに入った解放の条件をジャラジャラさせ、いつもの道を歩いた。
「御影、お早う…」
ガラスをこつこつと叩いて香は御影を起こした。
御影はゆっくりと目を開け、にこっと微笑んだ。
「朗報だよ」
そう言って、香は鍵を取り出した後、御影のドームのロックを外し、台に登った。
状況が読めずおろおろしている御影を培養ドームの中蓋が押し上げる。
出会った頃のように、香は軽々と御影を抱き上げて床に降ろした。
「一日だけ許可が降りたんだ。外に出られるよ!」
長い間培養ドームを通して聞いていた声が耳元に直接響く…
御影は培養液で濡れた体のまま香に抱き着いた。
…別れた時の温かさがそこにはあった…
「…カオリっ!ありがとう…!私…っもう無理だって…」
言葉が見つからなくなって御影はぼろぼろと涙をこぼす。
「御影がちゃんと静かにしてたからだよ…それより…久しぶりに声聞けて…僕も嬉しいよ…」
そう、御影はドームの中から香の声は聞こえた。
しかし香は御影がエスパータイプだという理由から、電子変換された文字しか読めなかったのだ。
「さぁ、行こう!立てる?…あ、これつけないといけないんだった」
香は御影の手を引っ張って立たせた後、ポケットから輪が二つついた鎖を取り出した。
片方の輪を御影の右手、片方を自分の左手にかけて苦笑する。
「悪趣味だけど…約束だから我慢してね」
御影は静かに頷いた。
人工の海岸線を二人は歩いた。
久々にあの頃の服に着替えた御影は、真っ白な肌を数ヶ月ぶりに太陽にさらし、風を感じていた。
「もう見られないって…思ってた…空も…海も…鳥も太陽も…」
思わず走り出そうとした御影を銀の鎖が引き留める。
反動で御影は後ろにこけてしりもちをついた。
「ごめんっ!大丈夫?」
香に起こしてもらった御影は数ヶ月ぶりの感情に襲われた。
「お腹すいた…」
培養ドームの中ではなかった食欲がお腹を鳴らす。
香はふっと笑って御影の手を引っ張った。
「食堂行って何か食べよう。その後皆に挨拶だよ?」
食堂でサンドイッチを買い、それをぱくつきながら二人は一枚の扉を開けた。
中では擾暁に司令を受けた詩乃が次々と姿を変える訓練をしていた。
「御影っ!」
「許可降りたのか!?」
二人は驚いて御影に駆け寄った。
「一日だけ…皆に会って良いって…」
御影は懐かしい二人の声を一言一言耳に刻むように会話をしていた。
とそこへ蔭時と立花が入ってきた。
「聞いたわよ、一日だけ許可降りたんでしょう?私も頼んで出して貰っちゃった。会えて嬉しいわ!」
「みんな…」
御影は右手が不自由になっている事などお構い無しに立花に抱き着いた。
「みんなの声…聞けてよかった…」
久しぶりに六人が顔を合わせた。
特に話すことはなくても、皆が自分の近くにいることは御影にとって嬉しくて堪らなかった。
数分後、二人は時間だと言って部屋に戻って行った。
御影と香も部屋からおいとまし、外に出た。
御影は騒ぎ過ぎて疲れてしまったせいか、極度の眠気に襲われていた。
香の腕に頭を垂れうとうとしている。
「部屋戻る?」
この質問に御影は横に首を振り、腕に抱き着いてまたうとうとと寝息を立て始めた。
「カオリのトコ…いる…」
許可された時刻は明日の正午迄。つまりは香の所にいても構わないのだ。
香は自分の部屋に御影を連れて行き、大きなベッドに彼女を寝かせた。
「…ココ…カオリの部屋?」
御影は薄く目をあけて、ベッドに座って本を読んでいた香を見上げた。
「そうだよ…良く解ったね…」
「いい匂い…カオリの匂いがする…」
そう言って御影は起き上がると香の肩に顔を乗せた。
「カオリ…、だいすき・・・」
「僕もだよ」
香は本を閉じ、御影の頭を撫でた。御影はその動作に少しむっとする。
「ちがう…!御影もうコドモじゃないもん…」
消え入りそうな語尾で何かを伝えようとしているが、いい言葉が浮かばないらしい。
香はふと、眉間に皺を寄せた。
「カオリ…、私 何も知らないけど…こういう時は 何をしたら良い…?」
額の水晶が淡い三日月の光を受けて不気味に赤く光る…
その色に魅せられたように、香の思考は…止まった。
香は静かに…セミダブルのベッドに何も知らない彼女を寝かせた…
彼女の服を静かに脱がし
不思議そうに自分を見つめる彼女の唇をふさぎ
月明かりで青白くなった彼女の柔らかい肌に爪を立てた
部屋の中に鎖の音を響かせて…
2002.07.02.03:35
<<BACK <TOP> NEXT>> というわけで破廉恥に。てかこういう描写って難しいなぁ…でもさ、何も知らない娘となんて…響の特権か?(爆
↑破廉恥じゃなくてエロだと思う。でも生温いっていうか描写下手だなー。仕方ないよもう三年前だもん(凹) ※05.07.31
にしても色々無理があったのでラストほぼ直しましたけどね。っていうか香さん手錠の鍵貴方が持ってるんじゃないんですか?(汗)
趣味悪いって言うかさ、今の自分が垣間見えてるよ。昔の自分…