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FATE3 満月の夜

 

あれから三日が過ぎた。

御影はやはり立花以外に心を許すことは無かった。

しかし、立花にでさえ御影は自分の事を話さなかった。

この三日間で彼女の謎は深まるばかりだった。

 

彼女は何も知らないのだ。

朝起きて髪をとかすことも、出かけるときに靴を履くことも・・・

そして何より・・・食事の方法を知らなかったのだ。食べ物の食べ方を知らない・・・赤子同然だった。

立花の後ろをいつもヒヨコのように歩き、気づくとソファの上に丸まって寝ている・・・不思議な少女だった。

 

「今日の夜は・・・立ち入り禁止だから」

夕食中、香はボソッと呟いた。御影以外の三人はうなづく。

「御影、今日はオレと交代だ。立花と一緒に俺の部屋で寝ろ。オレはソファで寝る」

蔭時はそういうと食器を運び部屋へ上がった。

「あ、私手伝いますっ」

立花は蔭時の後を追った。もちろん・・・自分にコバンザメのようにくっついている御影を引き連れて・・・

 

「――御影はお前を自分と同じ境遇だと思っているらしい・・・決してもとの姿に戻るなよ」

蔭時は部屋を片付けながら部屋にあったソファベッドの上で寝息を立てる御影を見た。

「はい。・・・あの・・・御影ちゃん起こしますか・・・?」

「いや・・・気持ちよさそうだからそのままにしてやろう」

 

 立花は元の姿に戻る事ができる。

・・・というよりも、3人の世話をする為に力を使って人の姿になっているのだ。

しかし、御影は違うらしい。もう元には戻れない体のようだった・・・

なぜ戻れないのか、どうしてその様な体になったのか、解らない。

そして、彼女は立花もそうだと思っているらしい。それが立花と一緒にいる理由でもあるようだ。

御影を見つめていた立花がふと御影から視線を移すと、自分が寝るはずだった場所に蔭時がうとうとと寝ていた。

どうするべきか迷ったが、一応起こしてみることにした。

「あの・・・私はどこに寝れば・・・」

「・・・・・」

蔭時は寝ぼけながら大きなベッドの空いた側の方にあった右手でトントンと布団を叩くとまた寝てしまった。

かなり疲れているらしい・・・

いつもは足元に元の姿で丸まって寝ているのだが(蔭時は辞めろというのだが)今日はそれが出来ない。

仕方なくベッドの片隅に身を休めることにした・・・

 

 

深夜

御影はカーテンから漏れる月の光で目を覚ました。

どうやらうたた寝してしまったらしい。目の前のベッドに蔭時と立花が眠っているのが見えた。

「・・・つき・・・」

空にはぽっかりと真ん丸い月。あたりを優しく照らしていた。

御影は窓を開けようとしたが、何もせずに部屋を後にした・・・



廊下を歩いていると香の部屋から声が聞こえた。

どうやら香と擾暁のようだ・・・。御影は足を止めた。

「全く・・・せっかくの満月なのにお相手は君一人かい?」

香の声・・・しかし口調が微妙に違う。何か部屋の中に不思議な雰囲気を感じ、御影は少しづつ扉に近寄った。

少し扉が開いている・・・四つん這いになって扉に顔を近づけた。

「お前が外に出ると何かと問題・・・

「どうやら遊びに来てくれたようだよ・・・入っておいで・・・」 

御影は扉越しに人影と目を合わせてしまい、ドタッとひっくり返った。

その反動で扉はゆっくり開いていった・・・

 

中には中世貴族のような服を着た香と真っ黒の服を着た擾暁がいた。

・・・が、よく見ると香の背中には大きな蝙蝠の翼が、擾暁も普段とは違い不思議な姿をしていた。

「来るな御影!帰るんだ!部屋へ戻れ!!!」

擾暁は狂ったように吠えた。香は後ろで不敵な怪しい笑みを浮かべている。

「おいで・・・よく来たね・・・」

月明かりが香を照らした。深い赤みがかった瞳ではなく、そこにいた響の瞳の色は琥珀色だった。

その目にじっと見つめられ、御影はそこから動けなくなった。

「へぇ・・・なかなか効くもんだね、黒い眼差しって・・・」

静かに香は立ち上がると擾暁に向かって手をかざした。とたんに擾暁がよろめく。

「て、てめっ」

「あまり動くと自滅するよ・・・混乱させたから」

そういい残し、香は御影を軽々と腕にかかえると、窓の外へひらりと飛んでいってしまった。

 

09/22  


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