FATE4 兄弟の秘密
「・・・だれ?」
屋根の上で月を見ながら御影はかねてからの質問をぶつけた。
「キョウだよ・・・」
背中の翼を風にはためかせキョウは笑った。
「キョウ・・・カオリと同じ顔・・・人間じゃない。」
御影は眉根を寄せる。
「確かにいつもはね・・・ただし、満月の晩だけいつぞやに寄生した私の・・・ゴルバットの遺伝子が動き出す。今いつもの 香は眠っている」
御影にはよく理解できなかったが、ともかく今の姿は人間ではなくゴルバットだという事は解った。
月が照らす彼の姿は確かにゴルバット―――吸血鬼だった。
「もう一人は?」
さらに質問を投げかける。
「あぁ・・・ミサトの事?あれは・・・ヘルガーだよ。彼の中にはいつもヘルガーが住み着いているらしくてね・・・
会話ができるみたいだよ。つくづく変な兄弟だと私は思うね」
そういうとキョウは御影の方を向いた。不思議そうな顔で質問する。
「私が怖くないのかい?」
御影はさも当然といわんばかりの顔をして見せた。
「べつに。私人間キライ。でも・・・人間じゃない」
その答えにキョウはまたも意味深な笑いを見せた。
「それはよかった・・・さて、邪魔が来る前に・・・」
キョウは御影の腕を両手で抑え、肩に顔を埋めた。
「痛っ」
キョウは顔を上げた。口元についた血が不気味な影を作る・・・
「ゴチソウサマ。やはり血の味は格別だ・・・」
口元を舐めながらキョウは久々の血の味を楽しんでいた。
「・・・美味しいの?」
御影はかまれた自分の首元を見ながらいった。かまれた跡が残っている。
「美味しいよ。君が日の光を求め逃げ出したように 私は血を求めて彷徨っているんだ・・・」
その言葉に御影は一歩下がった。キョウに疑惑の目をむける。
「ここにいるといい・・・香も君の事を気に入っているみたいだし・・・
どこから来たのかは聞かないが、そこよりは楽しい生活ができると私は思っているよ」
御影は黙ってうつむいた。
「コラァ―――――――――――――!降りて来いキョウッッッ!!」
庭から怒鳴り声がした。
「・・・まったく・・・キャンキャン五月蝿いイヌだねぇ・・・」
「イヌじゃねぇ!オレはヘルガーだっ!!」
「じゃぁ屋根くらい登ってきなよ・・・」
ミサトは庭にあった一番背の高い木に足をかけ、屋根へと登り始めた。
その姿を見てキョウは溜息を漏らすと御影を抱きかかえ、屋根にもう少しで手をかけようとしていたミサトに近づいた。
「一晩この娘と出かけてくるから決して探さないように。じゃね」
大きな翼をはためかせ木を揺らすとキョウは夜空へ飛び立った。
「駄目に決まってんだろ待てこのっ」
屋根ではなくキョウの服をつかもうとしたミサトの手は空を切り、真っ逆さまに墜落した。
「・・・マテ!コラァァァ――――――――――――ッッ!」
静かな空にミサトの叫び声が木霊した。
09/22