FATE5 月夜の遭遇
ミサトは月明かりの下を全速力で走っていた。もうかなり遠くまできてしまっている。
「くっそぉー!あいつどこ行ったんだよー!」
空の彼方に消えた御影とキョウを追ってはみたものの、経路が空では鼻も役に立たないので結局立ち往生してしまった。
行き着いた場所は広い広い草原だった。
《取り逃がしたのか・・・?》
頭の中に擾暁の声が響く。
「逃がした・・・この草原には人っ子一人・・・」
辺りを見回していたミサトは言葉を止めた。
「いた・・・」
風が吹く夜の草原に一人、小さな少女が月を見上げていた。
こちらの姿に気づく様子も無い。ただ黙って月を見ている。ミサトは静かに少女に近づいた。
《誰がいたんだ!?どうしたんだよっ!?》
中にいる擾暁には外がよく解らない。急に黙ってしまったミサトに呼びかけるが、その声も聞こえないらしい。
少女はミサトが目の前に近づいた時に初めて気づいたらしく、顔をこちらに向けた。
「・・・? あ な た な ぁ に ?」
月明かりに照らされた少女は、色白の肌に紺色の髪、若草色のワンピースにおそろいの色のリボン、
横には数個の大きな綿のかたまりをフワフワと引き連れている。明らかに人ではない。
「オレはミサト。ヘルガーだ。」
「 へ る が ぁ ? み さ と ? ・・・って な に ?」
ミサトは唖然とする。自分から聞いてきたくせに答えは滅茶苦茶だ。
「お前は誰なんだ?」
「わ た し ・ ・ ・ な ん だ ろ う ・ ・ ・ ?」
「・・・お前ずっと一人でここにいるのか?」
「ひ と り ・ ・ ・ って ? 」
―――――だめだ。オレこういうの無理!―――――
「変わってくれ」
《ぁんだと!?》
「
? 」
次の瞬間ミサトは姿を消し、人間の姿に戻った。・・・擾暁が呼び戻されたらしい。
「な・・・なんなんだ、一体・・・」
何が起こったのか何も伝えられていないので擾暁は訳が解らずキョロキョロしていると、
足元の少女に服を引っ張られ、視線を移した。
「お ん な じ に お い ・ ・ ・ む か え に き て く れ た ・ ・ ・ !」
少女は擾暁に抱きついた。
09/22