FATE7 日々
御影はあの日キョウに何か吹き込まれたらしく、ひときわ香に懐くようになった。
香は初め態度の変わりように驚いていたが・・・どうやらもう慣れたらしい。
それに加え、彼女は立花の口調を真似るようになった。
確かにあの話し方はどうかと思うが・・・。
しかし、口調を真似しきれていない御影はますます片言になり、見ている方はなんとも面白かった。
詩乃は記憶の曖昧な所が多くあるようで、自分の事すら何も覚えていないようだった。
とにかく昔からあの草原に一人でいたらしい。
小さい頃誰かに捨てられたのだろうか・・・
しかし詩乃は『必ず迎えに来る』と彼女に言い残して消えた誰かをまっているのではないか、
擾暁は心の中でそう思っていた。
それが人間なのか、それとも・・・詩乃や自分のような・・・半人型なのか・・・そのあたりは解らなかった。
とりあえず夜はヘルガーにも手伝ってもらい、詩乃が待っている誰かの手がかりを探してみる事にした。
彼女は御影と違って人当たりがよく、すぐに誰とでも仲良くなれた。
御影もあの日以来香に心を開き始め、楽しそうに笑っているところも垣間見られるようになっていた。
しかし、それとは裏腹に・・・毎日へとへとになっている人がいた。
立花だった。
六人家族の家事を全て受け持つ立花。
それにくわえ何も出来ない二人をつきっきりで見なくてはいけない。
いくら他の三人が手伝ってくれたとしても、この二人の世話は赤ん坊を見る何倍もの凄まじさがあった。
コンセントは容赦なく抜く、斬る、油性ペンで床や壁に落書きしていた事もあったかと思えば、
食器で積み木、食事中にフォークを渡せばかじったりダーツのように投げてみたり。
洗濯物が気づくと水浸しだったり、ちょっと目を離せば二人とも泥だらけだったり・・・
そのたびに風呂を沸かしていては間に合わない。家の風呂は沸かしっぱなし。
雑巾と掃除機は立花の標準装備品になっていた。
しかし、それも立花を筆頭に四人の必死の努力の末、近頃は大分ましになった。
どたばたと、しかし楽しく平和な日々は続いた。
二人はこの家に慣れ、生活に慣れ、人に慣れ・・・
こんな日が続けばいい。誰もがそう思っただろう・・・
しかし、この静かな日々は歯車が動き始めた確かな証拠だったのかもしれない。
10/04