FATE8 朝の訪問者
数ヶ月が経った。
その間に何度か満月の夜があった。
どうやらキョウはよっぽど御影が気にいったらしく、たびたび彼女を探して家中をうろうろしていたが、
外へ逃げ出す回数は減ったのでミサトは少々助かっていた。
そんなある日の朝、朝日を浴びに御影と詩乃は庭に出た。
朝露が日の光を反射してキラキラ光っている。葉の上の雫を一粒、詩乃がすくってなめた。
「アサツユはしあわせをはこんでくるんだよ」
詩乃は笑った。
「ほんと?」
御影も真似をしようと葉の上に指を滑らせたが葉の先へ流れていった朝露は全て地面に飲まれてしまった。
「・・・わたし・・・しあわせ なれない・・・」
御影はしゅんとしてしゃがみこみ、地面を見つめた。
すると後ろから肩を叩かれた。ビックリして二人は後ろを振り返った。
そこには擾でも響でも蔭時でも立花でもない、灰色の髪の毛をなびかせた背の高い男性がにこやかに笑いながら立っていた。
「君たちはどこの家の子だい?人の家に勝手に入ってはいけないんだよ?」
二人は家を指した。
「ここわたしのおうち。・・・でも・・・きょうのいえ・・・かも」
御影が一生懸命上を向いて説明した。
「ちがうもんっ!ここみさとのいえ!」
詩乃が御影の服を引っ張った。
「・・・じゃぁ・・・ふたりのいえ・・・?」
二人が顔を見合わせた。
「かげときとりっかは?」
二人は顔を同じ方向に傾けた。
「そうか・・・ここはわたしの家なんだがねぇ?」
男の人は笑った。
するとそこへサンダルを突っかけた擾暁がやってきた。
「おい、二人とも朝飯だぞ」
「みさとっ!みさとっ! このヒトにおうちとられたっ!」
詩乃がぴょんぴょん飛び跳ねながら男の人を指差した。
「は?」
視線をはるか上にずらした擾暁がぽかんと口を開ける。
「お・・・お帰り 父さん・・・」
「只今」
男は挨拶を返した。
「あのヒトだあれ?」
ソファで何やら書類を読んでいる男を見ながら、二人は小声で尋ねた。
「あの人は香と擾暁のお父さんで流というんだ。なかなか家には帰ってこないんだよ」
と蔭時は二人に教えてくれた。
すると流は立ち上がって六人のいる食卓へやってきた。
「ねぇ、ちょっと気になったんだけど・・・この子たちは?」
「あ、まぁ色々あって・・・数ヶ月前からうちで預かってんだ」
擾暁はどう説明すれば良いのかよく解らなかったので、とりあえずそう答える事にした。
「そうか、それはよかった・・・」
流はこちらを見つめる四つの目に気づき、微笑んだ。
―― そうか・・・ココにいたのか・・・ ――
10/04