温泉旅行編
前回までの粗筋。
一足早く部屋に帰ってきた俺は、なぜかテニスコートに行った筈の先輩に遭遇した。
先輩に誘われて散歩に出た。
俺は…
自分の気持ちにキリを付けたかった。
そのつもりだったんだけど…
以上語:稚弘
+++ 温泉旅行編 +++
「先生…あのさ…」
影貴は焦点の合わないような表情を見せた。
「…妊娠させた事ある?」
ブッっ
お代わりしたコーヒーを噎せ返して響は口を抑えた。
「なんで君はいきなりそういう脈絡のないことを言い出すかなぁ」
影貴の方を見ると、彼女は不思議そうな顔をした。
「…べつに…。噴かなくても良いんじゃないの?」
逆に訝しげな目で見られ、響ははっきり否定した。
「一度もございませんとも!…」
ふと
響は口を止めた…
レモンを紅茶に絞っていた影貴は不思議そうな顔をする…
「ま…
まさか…」
「えーちゃんにんっ」
「なんでそこでそういう有り得ない展開にもってくのよ!」
影貴が一つ咳ばらいをして喉を整えると、響は不機嫌そうな顔をした。
「ちぇー、せっかく既成事実が出来たと思ったのにさぁー」
「出来なくて結構!」
素早く切り替えして影貴は話した。
「この前ドラマで見たの。
中学生の女の子が妊娠しちゃって、高校生の彼氏に打ち明けたらその子が掌返したみたいに態度変えて
さ。
違う人の子じゃないのか?って。
酷いなぁ、って思ってさ、それを思い出しただけ」
響は黙ってその話を聞いていたが、言葉が終わると口を開いた。
「まぁドラマだから誇張はされてるだろうけど責任があるね。男なら責任とるよ。ま、僕ならそんな失
態しないけどね。青春は清く正しく美しくっ!」
「その台詞先生に一番合ってない」
最後の一言をしっかり否定されて響は苦笑いを浮かべた。
「で、なんでそんな話になったの?欲しいの?」
部屋への帰り道で響が尋ねた。
「いらなぁーい」
後ろで舌を鳴らしていた響には気付かず、影貴は部屋の扉を開けた。
「ただいまぁー…?」
すっかり集会所と化した部屋にいた人々は凄い形相で二人を見つめていた。
「…あ、ご、御免なさい勝手に帰っ、て…」
これはやばいかなぁ〜と目を反らすと、祥がなにやら納得したように頷いた。
「まぁしゃーねーわな、ブルーになるときもあるぜ、な?」
その言葉を引き金に尋乃が影貴に飛び付いた。
「えーちゃん御免ねっ!私えーちゃんが悩んでたなんて知らなかったの!でもねっ、私、響先生だった
ら大丈夫だと思う。絶対に幸せになれるよ、だから赤ちゃん降ろさないで…!!」
「…はぁぁ!?」
影貴は訳が解らなくなって目を白黒させた。
「てめぇ俺に向かって「結婚する迄は駄目だよ☆」とかいいやがったくせに!ばっくれないで責任とり
やがれ!この変態め!」
胸倉を掴もうとした擾を響は軽やかにかわした。
「ちょっ、先輩私たち何もっ」
止めにかかった影貴を尋乃が引き留めた。
「駄目だよえーちゃんお腹の子が…」
「そんなものいないわよ!!!」
その一言で空間が止まった。
「勝手に人を妊娠させないでくれる…?」
誰も動かない。
「誰だ、デマを流したバカは…」
蔭の問いに誰も答えない。
「でもさっき下で子供が出来たって…」
「テレビの話」
疑心暗鬼に呟いた尋乃にいさめると尋乃はゆっくりと影貴から離れた。
「…ごめんなさい…」
「…ふふっ」
その静寂を消したのは柚樹だった。
「相変わらずそそっかしいなぁ〜っ、はははははっ」
周りは呆れ果てた。
「どーせ、どっかの変態が夜這いして酔っ払った勢いで襲いこんで妊ませたんだろうと思ったけど、
まったく…馬鹿が揃うとネタが尽きないね。」
「わんちゃん毒舌まで下くなってるよ…」
ひそかに突っ込みを入れた孝子は向き直って笑った。
「まぁ一件落着と言うことで」
擾が尋乃の頭を軽く叩いた。
「ったく心配して損したぜ」
恒は時計を見て言った。
「陽も傾いてきたし、晩飯の時間までに温泉街でも行かねぇ?」
全員が立ち上がる。
「じゃあ用意して廊下に集合な」
その言葉を合図に全員が各の部屋に消えた。
「とんだ大騒ぎになっちゃったね」
自室で洗面道具を出して響は笑った。
「なんでみんなそういうこと信じるんだろ…」
半ば呆れて影貴が溜息をつくと、響が頭を撫でた。
「それだけ影貴ちゃんが無防備だということですよ」
「それ、さっき別の人にも言われた」
眉根を寄せると、響は背中を軽く叩いた。
「じゃあ頑張って治して下さいな。…着替えるけど…いる?」
「帰る」
二つ返事で影貴は出ていった。
「その無防備さが良いんだけどねぇ」
響は笑った。
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なにがなんだかもう。
とにかく次回がメイン、いえ、リベンジなので頑張ります。
集団風呂かぁ…是非男風呂を覗き(強制終了03.8.18 ねくすと。